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あなたが愛してくれたら【R18】

第21章 6月1日 高階家、社内


言いながら通り過ぎようとして上腕を彼の手に掴まれた。


「高階……」

「また目を合わせない。 あんまり嘘が分かりやすいってのもな。 理由は?」

「ちょっと、ここ会」

「何があった?」


強い力では無かったが、離す素振りは無いようだ。
自分の『 嘘 』に憤っている様子も無い。


「達郎さんの婚約の事がショックだったから?」

「……………」


婚約?


「大丈夫か?」

「 婚約って、達っちゃんが?」

「え?」


ぽかんとしている小夜子の表情に、怜治がしまった、という風に自分の口に手を当てた。


「私がショック……?」

「……ごめん。 知ったのかと」


気まずそうに目を逸らしている。
息を呑んで怜治をじっと見詰めている彼女の視線に、彼が続けた。


「気付いてたから。 悪い」


気付いてた?


「……離して」

「あ、ああ。 でも、小夜。 本当に大丈……」

「お願い。 もう、放っといて」


何か言おうとする彼を振り切り、階段を駆け下りる。

達ちゃんが結婚?

怜治が何で知ってるんだろう?

何を、どこまで?


駆けて、夢中で歩き気が付けば小夜子は会議室のドアの前に居た。

もし、ここが自分の部屋だったら。
ドクドクとなる心臓を手で抑える。

いや、どこだってもう同じ事だ。

胸に手を当て目を閉じる。



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