第19章 5月21日 高階家
「作ってるとまた匂いがするから、風通しのいい所で休んでて下さい」
「だな。 もういい時間だし、あんまり小夜を遅くに帰したくない」
「そう、ね。 必ずお返しはしますから、お願いしますね。 もし、なにかあったら」
ひたすら申し訳なさそうな紀佳の肩を怜治が押しやる。
「ハイハイ、いいからいいから、もう」
「でも」
「余計な事はいいから」
そうやって紀佳が奥の部屋へと連行されて行った後にしばらくして怜治が戻って来た。
「風上の部屋に寝かしといたから大丈夫だと思う」
「んじゃ、やりますか」
「はい」
冷蔵庫の材料を色々物色し、取り敢えず古いものから使っていく事にした。
調味料を見れば大体の料理の凝りようは分かるけど、紀佳は間違いなく料理上手に違いない。
シンク下にはラッキョウやにんにくの醤油漬け、手作りのハーブ酢等も置いてある。
「いいね、ああいう奥さん」
「そう?」
「怜治もその内分かる」
多分、父親が良い男なんだろう。
「何作んの?」
「今日はとりあえずあるものの整理で。 挽肉が痛みやすいからハンバーグにする」
「手際がいい」
「紀佳さんには負けるでしょ」
「んな事ない。 結構そそっかしいし」
取り敢えず皮むきをお願い、野菜と皮むき器を怜治に渡し、使い方を教えたのちに小夜子が調理に戻った。