第2章 4月5日 高階家
「ん、大丈夫……怜治くんの、今晩は前に、ココにちょうだい?」
そう言って、淫らに脚を開く紀佳。
歳やその更に若く見える外見の割に、成熟した紀佳は童貞だった怜治に女を教えた。
家を整えて待つ母であり、時に諭し軽口を叩く姉であり、その肉体で怜治を包み込む紀佳。
そうしたのは思春期の男の欲情だったか。
父への反発だったか。
紀佳への同情だったか。
もう定かでは無いが、初めて会った日から確かに惹かれてた。
『愛なんて、ない』
そう言い切ったあの女。
湊といったか。
一瞬壊してやろうかと思った。
紀佳と関係を持ち六年経つ。
他人に言える類いの事じゃない。
だけどこれが愛じゃないんなら、何が愛なんだ。