第18章 5月20日 社内、蕎麦屋
「この時期は社内コンプライアンス類の見直しをしてるんだけど、毎年他課からも協力してもらってて。 入社試験の小論文も見たけど、文章力があるみたい。 良ければ参加してくれる?」
「私が、ですか」
「そう、あとはまあ、ジェンダーやパワー、セクシャルみたいなハラスメントに関する事項にも。 後者には女性の意見は重要ですし。 筒井課長、良いですよね?」
「ん……あ、うん。 総務の依頼からなら、勿論」
「高階くんも。 少しだけ武井さんの時間を貰うね」
「良いですよ」
実は言うと、武井はもうほぼほぼ定常業務のサポートは難なくこなしていた。
来月頃からそろそろ任せても良いかな、等と怜治は思っていた所だ。
彼女たちがフロアを去ってから武井が耳打ちする様に話しかけてきた。
「あの人、湊さん。 ペットとか飼ってないですね」
「………さあ」
何で、こっちに聞く。
「申し訳無いですけど、やっぱり面倒なタイプだと思いますよ」
お前よりはマシなんじゃないか、と言いかけて怜治は堪えた。
こいつの前世はなんつったか、あの妖怪。
アレだ、きっとサトリか何かなんだ。
「まあ、さっき湊さんをイヤらしい目でみてたのは高階さんだけじゃなかったから良いんですけど、バレない様に気を付けて下さいね」
「………………」
何か反論しようとしかけたが、怜治は諦めた。
武井に口で勝てるわけない。
それに事実だし。