第18章 5月20日 社内、蕎麦屋
「見たいから」
「…………」
何となく照れつつもそれを手に取り、傷などをつけない様に注意深く留めてみた。
「どうかな?」
彼から向かって横を向き、それに手を伸ばした彼が満足気に小夜子の後ろ髪に触れる。
「小夜子だとこんなのも霞む。 でも似合う」
小夜子の顔が赤くなった。
「………どこでそんな台詞覚えたの」
「率直な感想」
間もなくオーダーしていた食事が運ばれてきて、怜治が待ちかねたとばかりに箸を割った。
小夜子の方はここは天麩羅が美味しいという彼の勧めで、天ざるを頼んだ。
彼の方には天丼、それから山菜そばの単品。
「また随分食べるね」
「昨晩から飯抜き。 滅茶苦茶腹減った」
「………お母さん、具合悪いの?」
「昨晩は少し。 そんなのより無理させたくないし」