第18章 5月20日 社内、蕎麦屋
彼が指定してきた店は会社からおよそ徒歩で十分。
何でこんなに、とは思うが時間が惜しかった。
というか、今気付いた。
履いてるのが社内用の内履きだ。
靴を変えるのを忘れるなんて。
小夜子はそんな自分を笑いたくなった。
「歩くの早い、な」
声がして、怜治が後ろから早足で追い付いてきた。
「あなたも……」
待ち合わせた、こじんまりした蕎麦屋まではあと二、三分の筈。
彼も、時間が惜しかったのだろうか。
「腹、減ったし」
「同じ、く」
まるで競走でもする様に二人は歩を緩めない。
お互いに顔を見合わせ、息切れの合間にどちらともなく笑う。
「いらっしゃいませー!」
年配の女性が元気よく声をかけてくる中、奥まった二人用のテーブル席に着いた。
「はあ、体力が……」
「あ、最初にこれ」
彼がガサガサと平たい色付きのビニールの袋を取り出してきて、小夜子の目の前に置いた。
「?何」
「何って……こないだの詫び、とか」
「そんなの」