第16章 5月15日 病院
「はい、ありがとうございました」
怜治がぺこりとお辞儀をし、ちら、とカーテンを開いて紀佳の様子を確認してから、小夜子を促し診察室を後にする。
待合室から程近い、廊下の黒いソファに腰を沈めた怜治が頭を下げて疲れた、というふうに深いため息をついた。
「良かった………」
「良かった……ね」
そこは合わせておいた。
その声で彼が小夜子を見上げ、手首をとって自分の隣へと促した。
「ごめん、誤解させて」
「……いいけど、あのあれ、もしかして後妻さん?」
「うん、俺の継母。 ああ見えても27」
「はあ」
世の中で言う年の差婚というやつか。
初めて見たけど。
「今日家出る前にいきなり倒れてさ、焦っちまった」
「仕方ないよ」
男性なんだし。
ああ、そういえば。
だから引越しとかいう話になったとか?
若い女性じゃ色々気を使うに違いない。