第15章 5月9日 社内
「は、えっとさっきのは」
「その後カフェでお茶とか、そういうのもデートですよ」
「……そんなもん?」
「そんなもんです。 じゃ、これ読んでおきますね」
「はい」
どっちが先輩なんだか分かんないな。
怜治が椅子を反転させて自分のデスクに向かい、苦笑した。
だけどなるほど、買い物ね。
視線がそこにあるデスクを通り過ぎ、遠くを見詰める。
こないだ小夜子に話してた、調理器具とかは?
食器も要る……枕、タオル、いやこれはいい。
ベッドカバー、とか。
小夜子が選んでくれるならよく眠れそうだ。
出来ればそれに続いて彼女の趣味の、朝のマグカップなんかあれば最高なんじゃないか。
金子が怜治に話し掛けようとし、彼の腕を組み、その真剣な表情を見て口を閉ざした。
彼は優秀な男ではあるが、歳の割に融通が効かない。
それがいい所ではあるとはいえ、老成するには早過ぎる。
後輩の教育を通して、もっと柔軟な思考を身に付けてくれればいい。
そんな風に、怜治を温かく見守る事にした。