第15章 5月9日 社内
ゴールデンウィーク最後の休日だった。
オフィス街を抜ける繁華街で、小夜子は偶然怜治を見掛けた。
百貨店を出た怜治の後に、小柄な女性が後に続いて自動ドアを通り過ぎた。
彼と同い年位だろうか?
いわゆる守ってあげたくなる様な、可愛らしい感じの。
怜治が自然に彼女の荷物を全て引き受け、後ろから女性が何かを言っている様だった。
振り返った彼は優しげな表情で、そんな彼女の頭をぽん、と撫でた。
そこで小夜子が踵を返した。
話し掛ける必要も無かったが、それ以上盗み見る理由も無いからだ。