第15章 5月9日 社内
そんな光景と最近の彼の様子を思い返す。
やっぱり彼女、かな。
そしたらもう恋人同士の振りなんて頼むべきじゃない。
一希やなんかも、もう新しい彼女が出来たのかな。
同期だった金子も結婚して。
今井も秋頃から海外赴任、との噂もある。
ちくりと胸に何かが刺さった気がした。
そんな風に、彼女の周りは変わっていく。
季節が過ぎる度に、歳をとる毎に。
自分だけが取り残されてく、ふとそんな風に思う事もある。
『自分で選んだ事だから』
怜治は思ったより強い人間だったらしい。
単にロマンチズムな理想論だけで生きてる訳じゃないのだと、あの時小夜子は思った。
そんな彼を否定する様な事を言った自分を、今なら穴に埋めたい気分だった。
「しっかりしろ……」
それでも自分に言い聞かせる。
自分のフロアに戻る途中に目を窓の外にやると、もう随分と緑が濃くなっていた。
空の青に目を細める。
時折、足元が覚束無くなる。
また暑くなってくる、特にこんな季節には。