第14章 4月29日 高階家
「親父、俺、その内家を出ようと思う」
「そうか」
門戸の前で二人が立ち止まった。
いつの間に父親の背を追い越したんだろう、怜治はそんな関係の無い事を思った。
「必要ない、とか言わないんだ」
「………紀佳が妊娠した」
「は」
「まだ本人からは口止めされてたんだが、な」
「そりゃ……」
泰が微妙に怜治から顔を逸らしていた。
自分とでは無い。
ここの所は無かったし、避妊をした上で危険日にも避けていた。
「お前がどう思うかは分からないが」
「…………」
「好きな様にすればいいと思う」
素っ気なくそういい、門の取っ手を外すと泰が先に戸口に向かった。
「は……はは」
「……………」
思わず笑いを漏らす怜治に泰は憮然とした表情のまま無言でインターホンを押す。
はあい、と中から紀佳の声が聞こえた。
「怜治」
「ん」
「家に居たければいたらいいんだ」
「………………」
「もう子供じゃない。 したい様にしろ」
「分かった」
「おかえりなさい! あれっ!? 怜治くんも?」
意外、という明るい表情で紀佳が二人を迎える。
「ただいま」
怜治と泰、二人の声が揃い、一瞬顔を見合わせると紀佳が可笑しそうにくすりと笑った。
泰が小夜子に尋ねていた。
「変わった事は無かったか」
「無いよ」