第14章 4月29日 高階家
余り家に帰りたい気分では無かった。
明日は連休前最後の仕事だ。
ここから更に飲みに行くほどでもない。
どうも近頃は、こういう気分の日が多い。
「怜治? 今帰りか」
「親父」
自宅まであと数百メートルという所だった。
後ろから声を掛けてきた父親の泰に怜治が振り向く。
「遅いな」
「付き合いで、ちょっと」
「いっぱしの口をきく」
「……………」
子がとっくに成長して親と肩を並べても、親は親のままだ。
またはそれ程興味が無いのか、見ていないのか。
「ちゃんと紀佳には連絡を入れておいたのか」
「……そっちこそ」
泰とまともに話をする事は滅多に無い。
紀佳が家に来てからますますそれは顕著になった。