第13章 4月29日 達郎の店
「そうなればいいな」
「うん。 そう思う」
そしたら小夜子は普通に恋愛をするのだろうか。
何となく、そうはならない気がした。
彼女は達郎の幸せを願っているだけだ。
まるでそれが自分の幸せだとでもいうように。
「小夜子は?」
「ん?」
『愛なんて、ないのに』
無いどころか、小夜子の愛は達郎に使い切ってしまってるんだろう。
もうずっと長い時間。
そして彼女は虚しさなど微塵も感じさせず、幸福そうに微笑う。
「もう少し……」
自分の事も考えたら?
そう言おうとしたが、言えなかった。
そうする事が彼女の幸せだとでも、こんな自分に言えるのだろうか。
義母と関係を持っている自分は彼女より幸せなんだろうか。
「間違ってんのはこっちかも」
「なんの話?」