第13章 4月29日 達郎の店
午後も9時を過ぎれば、ぽつぽつと帰り始める客がいる。
一方で、また入れ替わり店を訪ねてくる客も。
出される料理はコースとまではいかないが、何種かのカラフルな前菜から始まり、ローストされた肉類がメインだった。
合間に小腹を満たす小切れのキッシュや生ハムが供され、デミグラスソースの煮込みも美味かった。
それらを達郎は忙しなく動きながらお客に提供し、一人客に声を掛ける。
「最初はね、うちのお母さんも反対してたんだよね。 達っちゃんが勤めてた会社辞めて、お店やるって言った時」
そんな達郎を眺めながら、頬杖をついて小夜子が話し始める。
「けど、仕事が忙し過ぎて、その時付き合ってた女の人と別れたりして。 いつか誰かと結婚した時は、そしたら今度は一緒にここで働けるしって笑ってた」