第13章 4月29日 達郎の店
『フリの事?』
そんな。
そおっと達郎を視界を入れると、彼が一瞬だけこちらをチラリと見てまた視線を逸らした。
『どうしよ? 達っちゃんああ見えて鋭いんだから』
『五分だけ、ちゃんと演技しようぜ』
『分かった!』
迂闊だった。
今まで下手したら、怜治とは仕事の話と達郎の話しかしてなかったし。
そういえば、こないだの帰り際も不自然だった。
それにしても、達郎だけじゃなく怜治にまで気を使わせるとは。
まだ分からない所はあるにしても、彼は好んで偽るタイプではない。
どうやら自分は浮かれ過ぎていたようだ。
ここは私がちゃんとリードしなければ。
小夜子が背筋を伸ばし、口を引き締める。