第13章 4月29日 達郎の店
グラスを傾け、小夜子は陽気だった。
友人を誘った三周年目以来、ここの記念日に来れたのが久しぶりだったからだ。
一人で来ると、いかにも親しげな身内の私たちを周りが変に思う。
達郎も忙しいのに私に気を使う。
それにこんな事でもなきゃ、達郎はいつまでも私を子供扱いだ。
身内にもしかして、もひょっとしたら、も無い。
近親者、叔姪婚、そんな文字を昔は何度も調べた。
それなら彼の負担にはなりたくないから。
あの日みたいに『らしくない』事を達郎にさせちゃいけない。
そう決めた。
グラス向こうに置いていたカウンターの上のスマホが震えた。
玲治からだ。
確かまだ、ビール三杯目ってとこ。
こんなので彼が酔う訳がないし、お腹でも痛いのかな。
不審に思いつつ小夜子はそれを手に取った。
『おい、達郎さんに俺らの事怪しまれてんぞ』
「………………」