第13章 4月29日 達郎の店
彼女は、分かりやすい。
小夜子の目線が、肌か、髪か、いつもどこかにいる達郎に同調している様だった。
彼が近付くと微かに雰囲気が甘く匂い立つ。
そんな小夜子を怜治は仕舞いにはらはらして見ていた。
女は勿論、勘のいい男ならバレバレだ。
これで今までやって来れたのは、彼らが身内だというぬるま湯みたいな安心感だろう。
加えて小夜子の叔父の呑気さ。
とはいえ、先程から怜治は達郎からの視線も気付いていた。
彼女が座っている隣のスツールまでの距離は目測で測ると約70センチ。
どんだけパーソナルスペース遠い恋人同士なんだと自分でも思う。
あれでも接客業の人間だ。
姪っ子を気に掛ける叔父としては、どこか俺たちの不自然さに気付いてるのかもしれない。