第13章 4月29日 達郎の店
「それなら私もいっちゃおっかな」
「小夜ちゃんは、食事の後にね」
「こないだは、不可抗力だし!」
「どうだか」
会社では見せない、こないだの晩みたいな彼女の、恐らく本来の顔。
明るく、はしゃいで。
嘘の恋人。
どうしても来たかった記念日だというのに、他人を使ってまでも理由付けを必要とする。
普段は余程近付かないと分からない程の香り。
ダシにされた事なんて気にならなかった。
いつから?
どれだけの間?
達郎がにこやかにこちらに向き直った。
「後からスコッチの美味しいのいれたげるよ」
小夜子に男がいない理由は、この叔父だ。