第2章 一限目
「冨岡先生はよくこんなお店に来られるんですか?」
「いや...」
「もしかして無理させちゃったんじゃないですか!?」
「無理などしていない。俺は草津と来れたことが嬉しい」
冨岡先生の表情が柔らかくなる
私は動揺した
「と、冨岡先生なら他にいい女性と来れそうですけどねぇ」
「...いや、草津とがよかったんだ」
冨岡先生の真っ直ぐな目に私はつい目を逸らしてしまった
「こっちを見てくれ」
「だめ、今見れません」
顔が真っ赤だ
こんな顔見せられない
「お願いだ、俺を見てくれ」
私はゆっくり冨岡先生の方に顔を向けた
「っ、」
冨岡先生があまりにも優しく微笑むもんだから
息ができなくなる
「草津、好きだ」
私は何も言えなかった
私は不死川先生が好きなのに
冨岡先生の気持ちをすぐに断ることができないでいた
「少し...考えさせてください」
それから私たちは店を出て帰路に着く
家まで送ってくれた冨岡先生はいつもと変わらずに帰って行った
「はぁ...なんで断れなかったんだろ」
私はベッドに倒れ込む
脳裏に浮かぶ冨岡先生のあの優しい顔
私は不死川先生が好きなのに
好きなのに...
そして、気付いたら眠ってしまっていた
月曜日
学校に行くと生徒たちがチラチラ私を見ていた
なんだろう
そしていつものように男子生徒が保健室にやってくるがそれはいつもよりも騒がしかった
「ゆきの先生!」
「なに騒がしいわね」
「なにじゃねーよ!冨岡先生と付き合ってるって本当!?」
「えぇ!?」
私は生徒から言われて驚く
そう先日の食事をしていた所を保護者に見られていたのだ
それが土日のうちに広まって生徒の中で噂になっていた
その噂もきっと先生たちの耳に入っていることだろう
私は頭を抱えた
「どうしよぉ...」
不死川先生...どう思うんだろうか
するとその不死川先生が保健室にやってきたのだ
「どうした」
「あ、いえ...」
何も知らないような顔で不死川先生は話しかけてきた
「冨岡といい感じだそうだな」
「あれは!う、噂ですよ!?」
「でも、そんな噂が出るってことは何かあるってことだろ」
不死川先生は噂を信じている
私は一気に落ち込む