第1章 朝食を愛しい君と【沖矢昴】
「それは良かった」
微笑む昴の顔はとても優しくて、
貴方の瞳に映るのは、今は世界でたった1人、私だけだと思うと
優越感のようなくすぐったさえ感じた。
「食べ終わったら食器はそのままで良いよ。
僕が片付けるから」
「えっ片付けは私がするよ!昴が作ってくれたんだもん」
「ありがとう。じゃあ、一緒にやろうか」
並んでキッチンに立つと、少し狭い。
私はいつも昴の右隣。
こうするとお互いの利き手が重ならないから、何かと便利だ。
「ルナの気持ちが少し分かったような気がするよ」
「え?」
洗ったお皿を拭きながら、昴が言った。
「キッチンに立って、愛しい人のために料理をする。
それを2人で美味しいねって言いながら食べる。
何でもない風景なんだけど、
僕はすごく幸せだなぁって思ったんだよ。
この瞬間を10年後も、20年後も忘れたくないなって。
……ごめん、少し重かったかな」
照れ臭そうにうつむく昴を見て、思わず声が出た。
「そ、そんなことない!私も…」