第1章 朝食を愛しい君と【沖矢昴】
「お腹空いた?もうすぐできるよ」
これじゃまるで私が食いしん坊みたい…
恥ずかしく思いながらも、見つめる先には愛しい彼がいる。
こういうのを幸せと言うんだろうな。
明日になったら忘れてしまいそうな些細なシチュエーション。
でも、10年後20年後またこの場面を思い出して
今も変わらず愛しているよと、貴方に伝えたい。
そんな先のことまで考えているなんて知られたら
笑われちゃうかな?
「よーし。朝ごはん、できたよ」
目の前に置かれた真っ白な四角いお皿には
厚めのフレンチトーストにイチゴとラズベリーがこぼれ落ちそうなほど乗っていて
艶々としたはちみつがキラリと光る。
「わぁっ!昴、すごい!お店のみたいだね!」
「ハハッ、君のそんな顔が見られるなら早起きも悪くないな。
さぁ、食べよう」
いただきます、と声が合わさる。
一口サイズに切ったフレンチトーストを頬張ると、
バターの香りとともにとろっとパンが溶けた。
「んん〜〜!!美味しい!!」
ほっぺが落ちるという表現は今日、今この瞬間のためにあるんじゃないかと
本気でそう思った。
オリーブオイルとハーブソルトだけのシンプルな味付けをしたサラダとも合う。