第1章 朝食を愛しい君と【沖矢昴】
「…どうしたの?」
「いや、今日も可愛いなと思って」
フフッと笑いながら昴は私の髪についた寝癖を手ぐしでとく。
パジャマ姿にすっぴんで、美容院にも最近行けてないから
傷みとうねる髪にほとほと嫌気がさしていた。
今の自分を鏡で見たら、可愛いなんてお世辞でも言えるわけがないのだけど
昴がこうも毎日言ってくれるものだから、
もしかして自分は可愛いんじゃないかってうっかり勘違いしてしまいそうになる。
「今日は僕が朝ご飯作るね。テレビ見てて良いよ」
そうは言われたけど、とてもリモコンを持つ気にはなれなくて、
甘いミルクティーを飲みながら、キッチンに立つ昴を見ていたかった。
こんなにゆっくりとした朝もたまには良い。
昴が料理をする手つきは少したどたどしくて、
時々「オリーブオイルどこだっけ?」なんて
調味料のありかを尋ねられれば答える。
あぁ、私は昴と一緒に暮らしているんだ…
そんなこと、いちいち考えなくてもこれが当たり前に感じられるようになるまで
あとどのくらいかかるんだろう。
よく分からない考え事をしていると、料理中の昴と目が合った。