第1章 朝食を愛しい君と【沖矢昴】
貴方の甘く囁くような声に、
お砂糖じゃなくて私の方が溶けてしまいそう。
ダイニングテーブルとお揃いで買った椅子の背もたれを引きながら
「ほら」と微笑む昴がかっこ良すぎて、
もう一緒に暮らして5ヶ月経つのに、未だに慣れることはなかった。
スマホの画面をタップすると日時が映し出される。
確かに今日は土曜日。時間は7時20分だ。
もう少し寝ていたかったな…
最近仕事が忙しくて、家には寝に帰るだけ。
自分でも曜日感覚が分からなくなっていた。
今日が休みだと気づいた途端、気が抜けて眠たくなる。
「お待たせ。
疲れているみたいだったから、ミルクたっぷりのロイヤルミルクティーにしたよ」
「ありがとう」
湯気と一緒にまろやかなミルクの香りと、
ほんのりダージリンの香りがたつ。
マグカップにたっぷりと注がれたそれは、私好みの温度と甘さに調節されていて
隣にどんな高級な茶葉を使ったミルクティーが並べられようとも
私は迷わず昴が淹れてくれた方を選ぶだろうと
確信めいたものを感じていた。
「ん、甘くて美味しい」
二口目を飲もうとマグカップに口をつけると
隣から視線を感じた。