第1章 朝食を愛しい君と【沖矢昴】
「…やっば!寝過ぎた!!」
遅刻確定だと反射的に分かるほど覚醒した頭でベッドから飛び起きた。
アラームが鳴ったことにも気がつかず、
最悪なことに5分ごとのスヌーズにも全く反応できなかったようだ。
時間を確認することもせず、
乱暴に充電器からスマホを引っこ抜くとリビングに向かった。
「寝坊した!!今日は朝ご飯いいや!!
…ん?昴、何してるの?」
同棲中の彼が珍しくキッチンに立っている。
いや、普段から料理の手伝いをしてもらったり
食器洗いをしてもらっているから、彼がキッチンへ入る場面は多々あるのだが…
今日はあるものを身につけていた。
「おはよう、ルナ。
寝坊?良いじゃないか。今日は休日なんだし」
「……休、日…?」
白いカッターシャツの袖をまくってエプロンをつけた彼の左手には
フライ返しが握られている。
「ん?え??」
頭に入ってきた情報量が多くて混乱していると、
昴は手に持っていたものを置いて、近づいてきた。
「今日は土曜日だよ。仕事はお休み。
さぁ、ルナ?椅子に座って。
今、甘いミルクティー淹れるね」