第3章 ラブ・エモーション【沖矢昴】*
そう言うと、
昴さんはグラスのストローをよけて、なぜか自分で水を口に含んだ。
「……ん!?……ん……っ!」
重ねられた唇から、水が溢れてくる。
受け止めきれなかった水が首筋をつたって、ワンピースを濡らした。
昴さんの唇が離れたかと思うと、今度は熱い舌で濡れた首を舐められた。
「……っ!!」
ひどく官能的なその光景に、視界がぐらぐらと揺れる。
これは、酔いのせいだけではない。
「ルナさん、先程のカクテルの名前をご存知ですか?」
「し…知りません」
「…ラブ・エモーション。
カクテル言葉は “今宵、あなたを独り占め“ です」
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「…ふ……っ!…ぁ…」
「ルナさん、声は我慢しないほうが感度が上がるんですよ…」
ちゅ、ちゅ…とわざとらしく音を立てて鎖骨にキスをする。
お気に入りのワンピースは、いつの間にかハンガーにかけられていた。
昴さんはまるで壊れ物を扱うかのように、ブラジャーの上から優しく私の胸を揉む。
わざとなのか、偶然か、時折昴さんの細長い指先が敏感な突起に当たって
その度に身体がビクッと跳ねた。
「んんっ……!」
「可愛い…その声をもっと僕に聞かせて…」
するり、と背中に腕を回すとホックを外し、胸があらわになる。
「やっ……」
慌てて両手で隠そうとするが、昴さんに阻まれてしまった。
「隠す必要はありません…君はとても綺麗だ」
羞恥と興奮で、頭に熱が昇る。
耳元で囁かれる聞きなれない甘い言葉たちは、
私を誘惑するには十分すぎた。