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君想う

第7章 季節は巡る


意を決して薬局へと向かった

初めて手に取る検査薬
店員に差し出すその手は若干震えていた

家に帰っても検査をする勇気がなかった

「どうしよぉ」

「(実弥が知ったらどうするんだろ
産んでくれなんて言うのかな...まさか...それはないと思うけど、捨てられたり、しないよね...)」

不安でいっぱいだった

その夜、実弥は仕事帰りに来てくれた

「おかえり」
「ただいま」

ぎこちない笑顔に実弥は首を傾げる

「なにかあったか」
「なんでも、ないよ!」
「ん?」

実弥は不思議に思いながらもお土産と言ってケーキを手渡してくれた

「っ、ありがと。でも、まだちょっと具合悪いから今日はやめとくね」
「そうか。なら冷蔵庫に入れとくぞ」
「ありがとう」

ケーキを前に吐き気がした
それを悟られないように具合が悪いふりをする

「まだ具合よくならないか?」

腰掛けるちひろの隣に座り実弥は優しく頭を撫でてくれる

「うん...」
「今日は泊まれるからゆっくりしような」

実弥の優しさに涙が出そうになる

「実弥はさ...」
「ん?」
「っ、なんでもない!」

赤ちゃんは欲しいか
結婚したいと思ってるか
聞くことができなかった

「なんだよ」
「えっと、最近忙しいのかなーって」
「あーー、まぁ卒業式も間近だからなぁ」
「そっか!玄弥は無事専門受かったの?」
「ありゃ願書出せば受かるかんな」
「専門で頑張ってもらわなきゃね!」
「あぁ」

なんとか話をすり替えて「お風呂入るね」と立ち上がる

「一緒に入るか?」
「変なことしない?」
「具合悪いやつにんなことしねぇよ」

俺をなんだと思ってんだと睨まれる

「なら行こっか」

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