第6章 薬屋と少女
ウエイターのような恰好をしている少女は、こういう場所に来るには随分若い印象を受けた。
カウンター越しに俺に手招きする少女は、優しく微笑んでいる。
何を考えているのかと一瞬警戒してしまったが、少女から悪意のようなものは感じられない。
「なんですか」
俺はカウンターに近づきそう声をかけると、
少女は俺に酒の入ったグラスを差し出してきた。
どういうことか分からずに少女の顔を見つめてしまう。
すると少女は小声で俺に言った。
「お兄さんここ初めてでしょ、あんなところに一人で立ってると目立ちますよ」
そう言われ咄嗟に辺りを確認すると何人かが俺をじっと見ていた。
少女は続けて言う。
「取り敢えずこれ持ってください」
そうグラスを渡され、言われるがままグラスを手に持つが
少女の言っていたことがひっかかった。
“目立ちますよ”
まるで俺が目立ってはいけない立場だと分かっているみたいだ。
不審に思い彼女をじっと見つめるが、
近くで見ると益々こんな場所には似つかわしくない少女に見えた。
黒いストレートの髪は腰まで伸びて、
近くによると彼女の小柄さがよくわかった。
「お気遣いどうも」
俺がそう言うと彼女は笑って仕事に戻って行った。
遠くの方で仕事をする彼女をなんとなく見つめていたがどうにも年齢が分からない。
下手したら俺の生徒と同い年か…?
そう考えるとゾッとした。