第4章 繋ぎとめる理由
「許してやれって…これで何回目ですか…。しかも私今年で28だし、結婚だって考えなきゃいけないのに」
そう言って口を尖らせるとひざし先輩は話し出す。
「でもあいつ結構お前のこと気にしてると思うけどなー、仕事中でも写真とかたまに見てるし」
そう言われ私は顔を上げた。
「……だけど、相手に伝わらないと意味ないんですよ」
私の彼に対する心はひざし先輩が想像しているよりも限界を迎えていて、
彼と別れるということを考えるようになっていた。
「お前も大変だよな、お察しするぜー」
そう言ってけらけらと笑うひざし先輩にムカッとしてしまう。
「私可哀そうなので今日は奢ってくださいね!」
そう言ってひざし先輩の手から日本酒を取り上げた。
私がやけになってそれを飲み干すとひざし先輩は焦って止めに入る。
「おい!そんなに強くないだろお前!」
そう言われても私はコップを譲らない。
私の中にあるもやもやはこれくらいじゃ消えてくれない。
私はそれからもひざし先輩の制止も聞かずに強い酒を飲み干していった。
_________
気づくと景色がゆらゆらと揺れていて、
ここがひざし先輩の背中だということを理解した。
「あ、起きたな」
「起きてないです…」
そう言うとひざし先輩は笑いながら私を背中から下ろした。
「もう遅いし、こっから消太の家まで近いから送ってくよ」
そう言われ心臓がドクンと大きな音を立てる。
「いや…です…」
「まーまー、仲直りした方がいいと思うぜ」
そう言って私の頭を撫でた。
相澤先輩に今会いたくなんかない。私の事好きじゃないんだし。
きっと今更どうにもできない。
お酒でぐらぐらする頭では感情を抑えることができない。
「もう…別かれようかと思ってるんですよ、全然連絡も取れないし、会えないし、好きでいてくれてるのかどうかももう分からないし」
そう言葉にすると自然と涙が溢れ出てくる。
それを見てひざし先輩は驚いていた。
「もう嫌なんですよ…」
私がそう言うとひざし先輩は黙って私の頭を優しく撫でてくれた。
朦朧とした頭では理性なんかない。
私はその手を思わず握っていた。