第1章 監督生
寮に着いてからもこの不思議な体験をじっくり振り返る暇は無かった。
まずは何より掃除。
「片付ければ全然大丈夫だね。さすが元、寮だなー」
そう手を動かしていたらサーッと言う音が聴こえた。
「……雨?」
突然の雨に、グリムの不法侵入。
「やっぱり雨漏りしてる……バケツ探さなきゃ」
雨漏りに、ゴーストの出現ーーー。
グリムを巧いこと乗せて、協力してゴーストを追い払ったタイミングで夕食を持ってきてくれたクロウリーにゴースト退治のことを伝えた。
「そういえばこの寮には悪戯好きのゴーストが住み着き、生徒たちが寄りつかなくなって無人寮になっていたのを忘れてました」
「そんな大事なこと、言うの忘れないでよ…ゴーストなんて元居た世界には居なかったから思わずギャーッて叫んじゃったじゃん」
と、ボソッと呟いた言葉はクロウリーには聴こえなかったようだった。
そして、クロウリーによる腕試しを経てグリムと2人1組で学園の雑用係として学園に滞在できることになったのだ。
「実は入学式騒動の時から私の教育者のカンが言っているんですよねぇ。ユウさんには調教師や猛獣使い的な素質があるのではないか、と」
サッと掃除した出来栄えと、よく分からないそんな理由から(?)雑用係を担うことで衣食住の面倒を見てもらえることは、突然、知らない場所に来たユウにとって有難い話だった。
まだ夢からは醒めそうにないーーー。
「明日からの生活の目処も立ったし。さ、掃除の続きしよっ」
バケツバケツ………と呟きながら、ユウは少しでも快適に過ごせるように掃除を再開するのであった。