第1章 監督生
「……もう一度。闇の鏡よ!この者を……」
「どこにもない……」
「え?」
「この者のあるべき場所はこの世界のどこにも無い……無である」
そんな会話が聴こえてくる。
「そりゃそうだ。私の住んでる世界には、火を吹く喋る狸もいなければ、本が浮いたり鏡が喋ったりなんかしないし……ましてや魔法なんて存在しないのに……」
夢から覚める気配がないユウは、目を開けて小さく呟いた。
「なんですって?そんなこと有り得ない!ああ、今日は有り得ないのオンパレードです」
「……………」
ユウまでハッキリと聴こえる程、クロウリーが嘆いている。先程まで会話が出来ていた鏡が反応しない程、大事なのだろうとユウはぼんやり思った。
「夢にしてはリアルだなとは薄々思ってたけど……」
夢から覚めないのであれば棺の中に居る必要はないな、とユウは直ぐに棺の中から出た。
「私が学園長になってから、こんなことは初めてでどうしたらいいか……」
出てきたユウにクロウリーが話し掛ける。
「そもそも貴方どこの国から来たんです?」
「実は………」
ユウは自分の故郷について正直に話した。
「……聞いたことの無い地名ですね。私は世界中からやってきた生徒の出身地は全て把握していますが、そんな地名は聞いたことがない。一度図書館で調べてみましょう」
そう言うと、クロウリーはユウを連れて図書館へと向かったのだった。
図書館は先程、グリムから逃げるときに通った場所だった。
ところどころで本が浮いている。
クロウリーは目当ての本を探しだすと直ぐに読み始めた。
ユウが黙って待っていると、「やはり、ない」とクロウリーが呟いた。
「世界地図どころか、有史以来どこにも貴方の出身地の名前は見当たりません。貴方、本当にそこから来たんですか?嘘をついてるんじゃないでしょうね?」
「嘘なんかつくわけないでしょ」
ズイッと言い寄ってくるクロウリーに頭を横に振り、否定するユウ。
「こうなってくると貴方がなんらかのトラブルで別の惑星……あるいは異世界から招集された可能性が出てきましたね」
「異世界!?夢じゃなくて!?」
クロウリーの言葉にユウは思わず大きく反応してしまった。