第1章 監督生
「どうにかしてください!貴方の使い魔でしょう!?しっかり躾を」
「いや、だから私の使い魔なんかじゃありませんって!」
「……え?貴方のじゃない?」
「見知らぬケモノです。さっきから何度も言ってるじゃないですか!」
「……そ、そうでしたっけ?」
漸くクロウリーはユウの話しをきちんと聞いたようだ。聞いていなかったことを誤魔化すようにまた咳払いを1つするとニッコリと笑った。
「では、学園外に放り出しておきましょう。鍋にしたりはしません。私、優しいので。誰かお願いします」
「ぎにゃー!離すんだゾ!オレ様は……絶対、絶対!大魔法士になってやるんだゾー……!!」
クロウリーが指示をすると生徒は頷く。
そして、グリムは抵抗してみたが学園の外へ放り出されてしまった。
「少々予定外のトラブルはありましたが入学式はこれにて閉会です。各寮長は新入生をつれて寮へ戻ってください」
そうクロウリーが指示すると、集団が動き始めた。
「そっか。集団の中心に居たのが寮長さんだったってことか」
ユウは移動していく皆を見ていた。
「ーーさて、ユウさん」
殆ど人が居なくなった頃、クロウリーがユウに話し掛けた。
「大変残念なことですが……貴方には、この学園から出て行ってもらわねばなりません。魔法の力を持たない者をこの学園に入学させるわけにはいかない」
「……勝手に連れてきたのに?」
「心配はいりません。闇の鏡が直ぐに故郷へ送り返してくれるでしょう。さあ、扉の中へ」
ユウは良かった、と安堵した。
そして言われるがまま、扉と称した棺の中に入る。
「強く故郷のことを念じて………」
物音で目を覚ますと、喋る狸が居て。
火を吹きながら追いかけてきて。
魔法士の学校の入学式に出ることになって………。
「長い夢だった……」
ユウはここでの出来事を振り返りつつ、現実のことを思い浮かべた。
「さあ闇の鏡よ!この者をあるべき場所へ導きたまえ!」
「………………」
棺の蓋越しにクロウリーの声が聞こえる。
何が行われているのかユウには分からないが、暫く無音になる。
そして、まもなく話を変える度にクロウリーがやっていた咳払いが、また1つ聴こえてきたのだった。