第2章 転入生
丁度、会話が終わった時だった。レオナとラギーの耳が同時にピクッと動く。
「サッパリしましたー」
「そうかよ」
少し大きめの白いTシャツに黒のゆったりとしたシルエットのボトムス姿で現れたノクス。
結っていた髪も今はおろしている。
おまけに、レオナから正体を聞いたばかり。
そのせいだろうか。
「どうみても女の子にしか見えなくなったッス…」
「え!」
ポツリと呟くように言ったラギーの言葉に、ノクスはパアッと笑顔になる。
そしてラギーに近づいていき、手を握った。
「うおっ!?」
「僕、ホントに女の子に見える!?」
突然の事にラギーは驚いたが、ノクスは嬉しそうにラギーの手ブンブンと振っている。
「……見えるッス」
ラギーの返答を聞いて、バッとレオナの方を見るノクス。
「聞きましたレオナ王子!?」
「……良かったなァ」
「やっぱりアイツ等の見る目がないだけってことですよね!?」
「……ああ」
適当だがきちんと返事するレオナに、女性を大切にする習慣があることを改めて実感するラギー。
「アイツ等って?」
「衛兵やメイド達。全然女の子って言ってもらえないんだ」
「……。」
ラギーはそろーッとレオナの方をみた。
……レオナが視線を下げている。
あまり触れてはいけない話題ッスね……
人の顔を見て悟る能力が高いラギーは、話題を変えるために頭を動かした。
「でも、ココは男子校ッスよ?今みたいに反応してたら色々まずいッス!」
「あ。」
ノクスはピタリと喜ぶのを止めた。
完全に忘れていたのだろう。
「『普段通り』にしてろノクス」
「うぅ……承知しましたレオナ王子」
「あと王子呼びはやめろ」
「承知しましたレオナ様」
あからさまにしょぼんとするノクスにレオナとラギーは小さく溜め息をついた。
ラギーはまた空気を読んで、話題転換を試みる。
「そういえばノクスくんが空き部屋を掃除するにしても今日はどうするッスか?」
「ここで良いだろ」
「え!?」
ラギーが驚きの声をあげ、ノクスはキョトンとした顔でレオナとラギーを交互に見る。
「……床に寝るッスか?」
「あ?誰が床で寝るかよ」
レオナは舌打ちまじりにぼやいた。