第2章 転入生
レオナは尻尾でバシバシとベッドを打ちながら、懐から取り出した封筒をラギーに渡した。
渡されたということは見ても良いということだろう。
ラギーは王家の紋章の配われた高そうな封筒から手紙を取り出すと早速読み始めた。
始めの方は、近況報告と安否確認だった。
レオナが読めという部分はおそらくその後の文だろう。
『ナイトレイブンカレッジからレオナの留年が確定したと連絡があった。王宮と違って身の回りの世話も自分でしなければならないし、気を使う必要があるからだろう?そういうわけで世話役を一人、学園に送ることで学園長と話がついた。早く言ってくれれば良かったのに水くさい。しかし、これでレオナの実力が十分出せるはずだ』
「…この世話役がノクスくんってことッスね」
「ああ」
「ん?世話役ってことは護衛だけじゃなくてメイドの役もできるってことッスか!?」
「嬉しそうだなァ、ラギー」
「いやーそんなことないッスよ!少し楽できるなーなんて思ってないッス!」
「隠す気すらねえのかよ」
ラギーが手紙を返すと、レオナはその手紙を「砂」に変えて消してしまった。
「アイツの部屋を用意してねえって言っていたな」
「ノクスくんの見た目に、先輩たちが完全に舐めきっていた部分もあったッスけど……それよりも寮に新人が来ることを誰も聞いてなかったッス」
「あ?………そうだったか?」
レオナの返しにラギーは確信した。
伝達を忘れていたな、と。
「……アイツを寝込みに襲うなんざ無理な話だが、トラブルが起きたら面倒くせぇ。つーことでラギー、手前と同室にする」
「俺、今4人部屋で、しかも空いてないッスよ?」
「2人用の空き部屋があんだろ。アイツを1人にしてもいいが……」
「あー……レオナさんの知り合いだから、いきなり1人部屋でも納得するんじゃないッスかね?……表向きは」
「表向きだけだと面倒くせぇ」
まあ、確かに。とラギーも思っている。
それでも直ぐに頷けないのは理由があった。
「空き部屋、全く掃除してないからすぐには住めないッス」
「掃除はノクスにさせる。だからつべこべ言わずにテメェは荷物まとめておけ」
「そう言うことなら了解ッス!」
暑苦しい4人部屋から2人部屋に移れる、しかも掃除もしなくていいという好条件にラギーはニシシッと笑った。