第2章 転入生
サバナクロー寮ーーー
「……想像はしてたッスけど」
「うわー」
寮の入り口に、2、30人の上級生が待ち構えていた。
「へぇーこれが噂の転校生ちゃん?」
「可愛いお顔して俺達の寮に来るなんて命知らずだな」
「ココでは弱者は何されても文句言えねえのがルールだ」
ニヤニヤと笑いながら嫌味を言う先輩達をキョトンとした顔で見て、ラギーの方を見るノクス。
「なんか歓迎されてない感じ?」
「………ある意味、歓迎されてるッス」
「ふーん?」
首を傾げて、とりあえずと言わんばかりにノクスはペコッと一礼した。
「今日からお世話になりますノクス・イルシーです」
「ここは手前みたいな軟弱野郎が入れる寮じゃねー。そもそも、手前の部屋なんか用意してねーよ」
「そうですか」
ノクスは、嫌味など何事も無いように集団を通りすぎようとする。その行動に沸点が低い連中の数人がノクスに向かって手を伸ばした。
「手前ッ!?挨拶もなしに何処に行くつもりだ!?あ"あ!?」
ノクスは伸びてきた手をヒラリとかわす。
「どこって、とりあえず寮長に挨拶?」
「まずは俺達に挨拶しろやっ!」
次の男が拳を振り上げた。
ノクスはヒラリと交わして、ガタイのいいその男の腕にトンと着地する。
一斉にざわめきが起こるーーー。
ノクスはそこからピョンと地面に舞い降りた。
「…面倒くさいな………」
「「「「!?」」」」
そう呟いたノクスの声は先程よりも3オクターブくらい低かった。
「ーーー束でおいでよ、ダルいから」
ノクスはユラ…ッと動くとニヤッと不敵に笑い、地面を蹴った。
数分後ーーー
「うーん。やり過ぎたかな?」
「……正直引くッス」
ノクス以外、立っていなかった。
「あんなヒラヒラした動きだけで全員倒すなんてっ……!?危ないッス!!」
「うん?」
さっきまでの戦闘は、ほぼ暴力だったが突然、木の魔法がノクスを襲った。
「僕、正直なところ対魔法攻撃の方が得意なんだよね」
ラギーたち外野の人間たちには、ノクスは何もしていないように見えた。
しかし、ノクスに向かっていた魔法は攻撃を放った連中の元へ返っていったのだった。