第1章 監督生
「貴方が目覚めたたくさんの扉が並んでいた部屋ですよ。この学園へ入学する生徒は、全てあの扉をくぐってこの学園へやってくるのです。通常、特殊な鍵で扉を開くまで生徒は目覚めないはずなんですが……」
「あの大量の棺は、扉だったんだ」
浮いていた大量の棺を思い出して呟くユウ。
「それまでの世界に別れを告げ、新しく生まれ変わる。あの扉の意匠にはそんな思いが込められているのです。……おっと!長話をしている場合ではありませんでした。早くしないと入学式が終わってしまう。さあさあ、行きますよ。」
そう言うとツカツカと歩きだした男性に、ずっとタイミングを逃していた質問を漸く切り出した。
「その前に、ここは一体どこですか?」
「おや?君、まだ意識がはっきりしてないんですか?空間転移魔法の影響で記憶が混乱してるんですかねぇ……」
ふむ、と仮面の男性が口元に手を当てて考え込む。
「まあいいでしょう。よくあることです。では歩きながら説明してさしあげます。私、優しいので。」
そう言うと再び歩きだした男性に、ユウは着いていくのだった。
建物の外に出た辺りで、ごほんと咳払いをひとつしてから男性が話しはじめた。
「ここは『ナイトレイブンカレッジ』。世界中から選ばれた類稀なる才能を持つ魔法士の卵が集まるツイステッドワンダーランドきっての名門魔法士養成学校です。そして、私は理事長よりこの学園を預かる校長。ディア・クロウリーと申します。」
「ま…まほうし?ないと…かれ…?………はい?」
ユウは混乱している。
無理もない。現実離れした内容を次々言われているのだ。
そんな混乱したユウを見ても「空間転移魔法の影響による記憶の混乱」だと思っているクロウリーは話を続ける。
「この学園に入学できるのは『闇の鏡』に優秀な魔法士の資質を認められた者のみ。選ばれし者は、『扉』を使って世界中からこの学園へ呼び寄せられる。貴方のところにも『扉』を乗せた黒い馬車が迎えにきたはずです。」
「暗い森を通ったような……」
そう言われて僅かに覚えている事を口にした。
「あの黒き馬車は、闇の鏡が選んだ新入生を迎えるためのもの。学園に通じる扉を運ぶ、特別な馬車なのです。古来より特別な日のお迎えは馬車と相場が決まっているでしょう?」