第1章 監督生
食堂ーーーー
「さっき気づかなかったけど、シャンデリアもう直ってる……ちょっと他のシャンデリアより暗いけど」
食堂に戻って一番に気付いたことを言うと、その壊れていたシャンデリアの真下に、1人の生徒が立っていた。
プラチナブロンドの長い髪を緩く編んで1つ結びした生徒は、昼間、グリムが可愛い女の子といった子と同じくらい華奢で、頭に猫耳のカチューシャを嵌めている。しかし、昼間の子と同じくらい華奢なのに紫の腕章じゃない。
「飾り耳なんかじゃなくて本物なんだけど」
「え。」
そう言うと、その生徒はピコピコと耳を動かして見せる。よく見ると人間の耳の位置に、人間の耳は無い。
「君、心の声が駄々漏れだね。上手く隠さなきゃ」
クスクス笑う生徒に、ユウは口に出してしまったのか、と反省する。
「あ、いや。そうじゃないんだけど。……あれ?君って確か昨日このシャンデリアを壊した一味じゃなかった?」
「ユウくんですよ、イルシーくん。貴方に紹介しておきたくて連れて来ました」
「僕に?」
首を傾げて、キョトンとした顔なんかとても可愛らしい。そんな子が、あの犬耳のカチューシャをはめたマッチョな子と同じ寮だなんて。
「ええーーー『女性』なんですよ」
「ふーん」
先程、あれほど秘密を~と言っていた本人であるクロウリーの言葉にユウは驚いたが、イルシーと呼ばれた生徒は反応が薄かった。
「僕はノクス・イルシー。2年だよ」
「…ユウです」
握手して簡単に自己紹介を済ませる。
「ちょっと急いでるから詳しくは後でいい?」
「あ、はい」
そう言うと、ノクスはクロウリーの方を向いた。
「これが魔法石です」
「よく同じ波長の魔法石が見付かったね」
「ドワーフ鉱山でユウくんたちが採ってきたものです」
「へぇ~あの鉱山、まだこんな大きな魔法石が残ってるんだ」
クロウリーから魔法石を受けとると色々な角度から見るノクス。
そして、
『彼のシャンデリアに祝福をーーー』
そう祈るようにノクスが言うと、魔法石がパァア!と光り、シャンデリアへと飛んでいった。
そして、シャンデリア全体が淡く光り、その光が収まると他のシャンデリアと同じ明るさになったのだった。