第1章 監督生
「スゴい…」
その光景に思わず言葉が漏れる。
「イルシーくんはこの学校の生徒の中でも魔力が凄い種族なんですよ」
「そうなんですね」
ふぁーっと欠伸しながら伸びると、ノクスはクロウリーに手を差し出した。
「やれやれ。ちゃっかり度はブッチくんと変わりませんねえ」
「何事も等価交換が基本でしょ。マレウスさんに頼むより格段に良いと思うけれど?」
「はぁ。痛いところ突きますね」
そう言うと、クロウリーは懐から封筒を取り出した。
それを受け取るとノクスはニッコリと笑ってユウの手を取った。
「植物園に行くんでしょ?僕もそっちに用があるから一緒にいこう」
「あ、はい」
こうしてノクスとユウはその場を去っていった。
ーーー
「へぇ~。たぶん?異世界から来たの。それじゃあ勝手が分からなくて大変でしょ」
「魔法とかなかったから毎日が斬新です」
「ポジティブだね」
道中、ユウの秘密を知った第一人者としてノクスは話を聞いてくれていた。
「まあ、魔法はあのモンスターくんがいるからいいとして、今困ってることはある?」
「うーん……特には。強いて挙げるならオンボロ寮の雨漏りくらいですかね?」
「雨漏りは……どうにでもなるからいいや。体調は?大丈夫?ほら、その……月のものとかさ」
ノクスがボソッと小声で質問してきたため、ユウも小声で返した。
「あ。全く考えてなかった……終わったばかりだった……筈だから」
「…そっか。でも一応手配しておくよ。購買部で入手できないこともないけど、生徒が全く居ない時間を狙うことは難しいだろうし」
「有難うございます」
「僕はサバナクロー寮に居るから何かあったら声掛けてね」
「はい!」
ニコッと笑ったノクスにユウも笑顔になった。
話が丁度、一段落したときだった。
「ユウ!おせーんだゾ!!」
「グリム!」
あまりにも来ないユウを迎えに来たのだろう。
中庭に出たところでグリムが怒りながら向かってきたのだ。
「ゴメンゴメン!」
「アイツら待たせるとうるさいから早く行くんだゾ!」
「そうだね」
ユウはノクスに一礼すると直ぐに植物園に向かって走り出したのだった。