第1章 監督生
……ワケではなかった。
その日の夜中、不思議な夢をみて目が覚めたユウは誰かが寮の扉をノックしている音に気付いた。
先に気付いたグリムが部屋に来ていたことはつっこまないでおこう。
ーーーきっと怖かったんだな~なんて。
などと考えながら寮の玄関の入り口を開けたら、いつぞやの騒動でグリムの首に嵌められた首輪と同じモノをしたエースがムスッとした顔をして訪問したきたのだ。
「タルト食った」
それが理由らしい。
ユウが寮長への謝罪を提案して、とりあえず今日は眠ることにしたのだった。
パタンッ……
「ふぅ…疲れた」
ユウは自室に戻るとついさっきのやり取りを思い出した。
「じゃ、とりあえず今日どこで寝ればいい?」
「オメー、本当に泊まる気か。オレ様とコイツの部屋以外まだどの部屋も埃だらけなんだゾ。寝るなら自分で掃除しろ」
「げっ、掃除とか絶対やだ。ユウ~、部屋に泊めてよ。オレ、スマートだから幅取らないしさ。ねっ」
「談話室のソファへどうぞ」
「ちぇ。ケチ。いいですよ~1人寂しく談話室のソファで寝ますよーだ。おやすみ!」
そう言ってエースとグリムと別れたのだが。
「勝手に部屋に入ってくるグリム……は、まあ人間じゃないしペットと思えば大したことないけれど………この世界の人たちって雑魚寝とか当たり前なのかな。………何となくモヤッとするような、こう何かが引っ掛かってるような………」
ベッドに横になりながら「う~ん」とうなるユウ。
「ま、いっか。明日考えよう」
そう呟いてから数分で、ユウはスヤスヤと寝息をたて始めたのだった。