第1章 監督生
ユウ達は一番最初に訪れた廃屋まで走って逃げた。
「いってぇ……なんだったんだよさっきの!あんなの居るなんて聞いてねーって!」
「ただのゴーストではなさそうだったな……」
呼吸を整えながらエースとデュースが話し始める。
「もう諦めて帰ろーよ。あんなんと戦うくらいなら退学でいいじゃん、もう」
「なっ!?ざっけんな!退学になるくらいだったら死んだ方がマシだ!魔法石が目の前にあるのに、諦めて帰れるかよ!」
「また始まった……」
「だな」
エースとデュースの言い合いをユウとグリムがあきれながらみている。
しばらく言い合いをしているのを黙ってみていたユウはタイミングの良いところで口をはさんだ。
「魔法でどうにかならないの?」
魔法のことを詳しく知らないがゆえの質問。
「先ほど学園長が言っていた通り魔法は万能ではない。強くイメージできなければ魔法は具現化しないんだ。大がかりな魔法や複雑な魔法の使用には訓練が要る」
「だから魔法学校があるんだけどね」
「成る程……」
その事を理解してくれているのか、デュースとエースは無知を責めることなく説明してくれる。
「パッと思い浮かべた通りに魔法を使うにはかなりの練習が必要ってワケ。ぶっちゃけ、テンパッてるとミスりやすい」
「みんなテンションで使ってるとばかり思ってたよ。成る程、だからグリムは火しか出せないんだ」
「んなっ!?こ、これからもっとすごい魔法を使えるようになるんだゾ!オ、オレ様はまだ本気出してないだけなんだゾ!」
突然の指摘にグリムが慌てて言い訳をする。
「とにかく、僕はなんとかしてあいつを倒して魔法石を持ち帰る」
「だーかーら。お前さーシャンデリアの時といい実は相当バカでしょ。さっき全然歯が立たなかったくせに「なんとか」ってなに?何度やったって同じだろ」
退学を避けたいデュースと、それをいちいち馬鹿にするエースが再びいい争いを始めた。
「また始まったんだゾ……」
グリムのぼやきに合わせて、ユウも「はぁー」っと溜め息を着く。
そして、
「じゃあ全員仲良く退学ってことで」
「「えっ……」」
ユウがニッコリ笑いながら言うとエースもデュースも驚きの声をあげた。