第1章 監督生
3人と1匹が去った後、クロウリーは野次馬の方へ歩いていった。
「ほら、危険ですから触らない!皆さんも寮へ戻りなさい」
そう言うと野次馬たちが散っていく。
「あ、ブッチくん、イルシーくん。君たちはちょっと待ってください」
呼び止められた2人はピタッと足を止めて振り返った。
「なんッスか?ここの片付けでしたら5千マドル頂くッスよ」
呼び止められた身長が少し高い方の生徒が、そう言うとクロウリーはやれやれ、と首を左右に振った。
小柄な方がジトーッとした目でクロウリーを見ている。そして、口を開いた。
「僕を見付けて『1つだけシャンデリアを直す方法が~』なんて言ったような気がしたんですけど」
「ギクッ」
「…直せるッスか?ノクス君」
クロウリーのわざとらしい驚きを無視して、ラギー・ブッチは一緒に居たノクス・イルシーに質問する。
その質問にノクスはキョトンとしている。
「復元することは出来るよ」
「結構バラバラになってるッスよ?」
「そこはあんまり問題ないかな。でも『魔法石』は替えが必要だけど」
そう言うとノクスは人差し指でシャンデリアを指す。
「あるべき場所へ、あるべき姿へ戻れーーー」
ノクスの指先に光が集まり、大きく膨れ上がるとそれがシャンデリアの破片が散った周辺を優しく包んだーーーそして。
シャラン!
「!?元に戻ってる……あれ?灯りもついてるッスね」
「素晴らしい!まさか、本当に直せるなんて!」
クロウリーが大袈裟に拍手する。
ノクスの手には砕けてしまった魔法石が乗っている。
「魔法石の『加護』がない状態だから蝋燭が尽きれば消えちゃうけどね」
「…やっぱりそうですよね」
「これ以上はマレウスさんくらいの方でないと僕では無理」
「いや、魔法石の復元は彼でも不可能でしょう」
少し残念そうに、でも分かってましたと言わんばかりにクロウリーが落ち込む。
「学園長、復元した報酬にこの魔法石もらっても良い?」
「どうぞ。壊れてますから」
「砕けた魔法石だけって少ないッスよ。もう少し吹っ掛けて…」
「大丈夫だよ。帰ろうラギー。これ以上待たせるとレオナ様の機嫌が下がってしまう」
「そうッスね」
そう言って2人は、目的地だった購買部へ急いだのだった。