第1章 監督生
「「ええええええ~~~~っ!?」」
クロウリーの一言にエースとデュースが叫び声をあげた。
「そんな!どうかそれだけはお許しください!俺はこの学園でやらなきゃいけないことがあるんです!」
「馬鹿な真似をした自分を恨むんですね」
クロウリーは冷たく言い返す。
「許して頂けるなら弁償でもなんでもします!」
「シャンデリアなんて一般市民の家になんてないし特別で、しかも高いんじゃ……」
ユウの心配は退学の二文字を突きつけられた2人には聞こえていないようだった。
「このシャンデリアはただのシャンデリアではありません」
「ほらやっぱり」
ボソッと呟くユウ。
「魔法を動力源とし永遠に尽きない蝋燭に炎が灯る魔法のシャンデリア。伝説の魔法具マイスターに作らせた逸品です。学園設立当時からずっと大切に受け継がれてきたというのに……歴史的価値を考えれば10億マドルは下らない品物です。それを弁償できるとでも?」
「じゅ、10億マドル……!?」
お金の単位が違うため価値が違うかもと2人の様子をみるユウだが、絶望的な顔をしていることに気付き大金なんだと理解する。
「で、でもさ。先生の魔法でパパッと直せちゃったりとか……」
「魔法は万能ではありません。しかも、魔法道具の心臓とも呼べる魔法石が割れてしまった。魔法石に2つと同じものはない。もう二度とこのシャンデリアに光が灯ることはないでしょう」
「そんなぁ……」
「ちくしょう……なにやってんだ俺は……母さんになんて言えば……」
そう落胆の声をあげる2人。
気が付けば物音に引き寄せられてか食堂の入り口には 野次馬ができている。放課後だったというのに人数は多い。
ユウがもうこんな大騒ぎになっていることを不安に思っているとクロウリーも野次馬達の方をチラリとみて、少し考え込む。
「……………そうだ。1つだけ。1つだけ、シャンデリアを直す方法があるかもしれません」
「「えっ!?」」
「このシャンデリアに使われた魔法石はドワーフ鉱山で発掘されたもの。同じ性質を持つ魔法石が手に入れば修理も可能かもしれません」
騒動を終息させるためか、思い出したのか。どちらにしろ退学のかかった2人にとっては有難い切り返しだった。
こうして3人と1匹はドワーフ鉱山へ向かったのだった。