第6章 映画鑑賞はお静かに
「何をそんなにふくれてるんですか?」
「別に」
むぅー、と。
あからさまに不機嫌に膨れて体育座りするあたしを、後ろから教授が抱きしめる形で現在、映画鑑賞中。
そしてあたしを抱きしめる教授の右手にはワイングラス。
ガラスのテーブルには先程教授がササッと作ってくれたお酒のつまみたち。
教授が料理している間広々と使用できていたソファーは、また窮屈な空間へと変わり、あたしもお酒飲みたい!と意気揚々と告げた希望はあっけなく却下された。
「そんなに飲みたいですか?」
ふー、とため息が後ろからふってきて。
「そうじゃ………」
『ない、子供扱いが嫌なだけ!!』と抗議のため振り向いた顔ごと掬われて。
塞がれた唇からは、たぶんワインが、流し込まれた。
途端に喉元を通る熱くて苦味のあるそれに。
思わず思い切り、えづく。
「ほらね。時雨にはお酒は無理ですよ」
咳き込むあたしの背中をトントン摩りながら、教授がくすりと、笑った。
「………っ」
さらに不機嫌に、体育座りしたままの足をさらにぎゅうと握って。さらに丸くなる。
そんなあたしの様子をくすくすと笑いながら、教授は後ろから抱きしめた。
「ほんとに時雨は、かわいいね」
カタン、とワインをおいて。
教授の左手はお腹を。
右手は、体育座りした足の間へと、するりと入り込んだ。