第6章 映画鑑賞はお静かに
にっこりと雨音を問いただす教授とは裏腹に、どんどん青ざめていく雨音の顔色。
「……か、課題、を」
「課題、ねぇ」
ふーん、と何やら意味深に雨音のノートをチェックする教授。
当たり前だけど。
ノートは真っ白だ。
「映画見てた」
雨音にベーっと舌を出せば。
さらにさらに。
気の毒なくらいに血の気がなくなっていく。
そんなに教授が怖いならちゃんと課題やんなさいよ。
全く。
「一緒に映画、ですか」
「………ねぇ時雨、俺を殺したいの?毎回毎回おまえの言葉ひとつで俺がどんな目に合うか知ってる?ねぇ?」
「知らない」
「……だよなー」
雨音ってばすでに半分泣き声じゃない。
そんなに教授が怖いのかしら。
仕方ないわね。
少しだけなら、フォローしてあげるわよ。
DVD、勝手に再生したのあたしだし。
「教授あのね、雨音は課題やろうとしてたんだよ。あたしが映画見よ、って誘っちゃったから、ついつい見入っちゃったのよ。雨音、ちゃんと課題やろうとしてたわ。だから怒らないで、ね?」
「一緒に、映画ねぇ」
チラッと雨音に教授が視線を向けて。
雨音の顔はびく、と強張る。
「大丈夫ですよ時雨。課題は来週まで提出すればオッケーです。ねぇ?雨音くん」
「……ハイ」
「そうなの?なんだ、雨音があんまりビクビクするからまた怒られちゃうのかと思ったじゃん。なら続き一緒に見よ?教授も見る?」
「ええ、私もご一緒したいです。…でも雨音くんは具合悪そうですから、家で横になった方がいいかもしれませんよ?」
「ほんとだ雨音。まだ顔色悪いよ?教授に怒られるの心配してるのかと思ったけど、ほんとに具合悪い?ベッド使う?」
「…いや、帰ります」
足取りフラフラに立ち上がる雨音の後を追って玄関へと雨音を見送ると。そのまま額に右手を当ててみる。
良かった。熱はないみたい。
「………いやもうほんと、おまえの言葉が1番きいたわ」
「?」
「……ちゃんと、骨は拾って埋葬してくれよな」
「?いつの話?」
「明日」
「?」
意味不明な言葉を残し。
雨音はフラフラと玄関を出ていった。