第4章 暗殺者は三度(みたび)哭く
背中を丸めて、小さくなって震わせて。
声を我慢するように両手で唇押さえて。
時雨が静かに、首を振る。
酔ってないの、バレてた。
酔ったフリして、なんもなかったフリして。
このままいっぱい甘やかそうって。
襲っちゃおうって。
思ったのに。
時雨はなかなか、思惑どーりにはいかないな。
「…………時雨」
ちゅ、ちゅ、て。
うなじ。
剥き出しにした肩。
腕。
柔らかな肌へと、口づける。
脱がそうと引きづり下ろそうとするパジャマを胸元で押さえて、時雨が邪魔をした。
代わりに露出した背中へと舌を這わす。
小さく可愛らしい声を漏らして背中をを反らし。
逃げるように、うつ伏せに顔を枕へと、埋めた。
こんなの、全然逃げたうちに入んないのにね。
仕草がかわいすぎて、思わずくすりと、笑みがこぼれる。
「時雨」
中途半端に肌けたパジャマから見える背中に、指先を伸ばし、つー、と、背骨を撫でるように触れれば。
びくん、と綺麗な曲線を描いて体がしなる。
全部、俺が仕込んだんだ。
なんにも知らない時雨の身体に快感を埋め込んだのは俺。
気持ちいいを教えたのも。
どう反応するのかも。
どこをどう触れれば時雨が悦ぶのかも。
全部、俺が教えた。
俺しか知らない。
「ごめん時雨、そろそろ機嫌直さない?」
時雨は頑固だから。
「…ずっとそのままでいるなら、もう時雨に触れないけど、いいの?」
「…………っ、駄目!!」
だけどそれ以上に、チョロすぎだから。
そんな時雨が、かわいくて大好きなんだ。
「嫌っ」
カバ、っと身体を起こして。
時雨が、首に巻きついた。
「…………知ってます」
震える時雨の背中へと手をまわし、ポンポン、とひと撫で。
肩へと顔を埋めたまま。
時雨をベッドへと押し倒した。
拍子に。
肌けたパジャマが、腕のところまで落ちてきて。
時雨の綺麗で豊満な胸が、眼下に晒される形と、なる。