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暗殺者の愛で方壊し方

第4章 暗殺者は三度(みたび)哭く




「…………どうしました?時雨?」


「うん…………」




ケーキのお皿とマグカップをキッチンで洗っていれば。
もの欲しそうに捲り上げた袖口をちょこんと指先で引っ張る時雨がなんとも可愛らしくて。
理性に負けてこのまま襲いたくなる。
だけどそこは冷静に。
冷静に。
我慢。



「…なんでも、ない」



俯いて、小さく呟きながらソファーへと移動する時雨を目で追う。
クッションに顔を埋めて丸くなる姿が、やばい。
かわいすぎて気付かれないように、口角を上げた。




「…っ、どこ、行くの…………?」



洗い物を終えて、カタン、とわざとらしく音を立てながらリビングのドアを開けると。
不安そうに顔を上げる時雨。
気付かないふりをして、敢えてそっけなく、告げた。



「仕事です」
「え」
「書類が溜まってるので、しばらく部屋に篭ります」
「…………そう、わかった」



俯いて。
クッションを抱きしめながらボスン、てソファーへとつまらなそうに逆戻り。


「…………」


抱きしめたくなる衝動を抑えて。
リビングを出た。






………………………………。







「…………そろそろ、かな」




チ、チ、チ、チ


時計の音だけが耳障りに響く静けさ。
デスクに置かれた書類たちは綺麗に整えられたまま。
開かれたままのpcをパタン、と閉めた。
同時に。


「…………教授?」


トントン、と小さく叩かれたドアと時雨の不安気な声に。
知らずに笑みが零れた。

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