第3章 失敗は成功のもと
頭の中で本に悪態ついて。
顔をしかめていたら。
そのまま顎を取られて、視線ごと上向きにされた唇に教授の唇が重ねられた。
「んぅ?」
意味わからない。
今、なんでキス?
突然すぎて目を瞑る暇もなく、見開いたままの瞳。
教授の膝の高さの分、床への距離が遠くなった両足をバタバタとバタつかせて。
胸元へと伸ばした両手で教授のシャツをぐ、と握る。
と。
教授の目が、あいて。
目が合うと、その目は恍惚に細められて、また閉じられた。
「き、教授…………っ、待って、何…っ」
「時雨も食べますか?」
「え…………、んむっ!?」
フォークから直接口に入ってきたのは、焦げたハンバーグ。
モグモグと咀嚼して喉をゴクンと鳴らす。
「どうでした?」
「…………美味しくない」
うぇ、と舌を出すあたしに笑って。
教授はどんどん、不味いハンバーグを平らげて行く。
「教授、いいってば食べなくて!!美味しくないもん」
しかもなんか、表面焦げてるくせに中、生っぽいのあった。
「お腹壊しちゃうよ!」
「そんなヤワな体してません」
「教授っ!!」
「なんです?もっと食べます?」
「じゃなくて……、あの、怒ってる?」
「どうして?」
どうして、って。
言葉を詰まらせる間にも教授はどんどん、口へと運び平らげていく。
「教授!」
ぐい、て。
教授のほっぺたを掴んで視線を強引に合わせれば。
驚いた表情はすぐににこりと笑みに代わり。
横向きに座っていた体を持ち上げて、正面に向かい合う形で座り直された。
さっきよりも教授を跨ぐ分、床への距離は遠くなり、足は完全に床につかなくなる。
「こんなに嬉しくて仕方ないのに、何を怒ればいんです?」
「ぇ」
「あーもー、このまま時雨ごと食べちゃっていい?」
腰を抱き寄せられて。
教授の顔が胸へと埋められた。
「ちょ、ちょっと教授…………っ?頭追いつかない。怒ってないの?こんなの出して、呆れてないの?」