第2章 暗殺者の上手な愛でかた壊しかた
「とびきり優しくします」
「そ、ゆ、もんだい、じゃ………っぁあん」
今度は。
自由を奪った腕に、舌を這わして。
「上書き、したい。時雨」
すでに蕩けきって半開きのままの唇へと、舌を伸ばした。
「時雨、舌、ちょーだい?俺を受け入れて」
「…………っあ、ふ、ぅんん」
言えば。
従順に、舌を伸ばしてキスに応える時雨がほんと、かわいい。
一度でも。
一瞬でも時雨を手離そうとした数秒前の自分を殺してやりたい。
無理。
そんなの。
時雨が離れたいって言っても、俺が無理だ。
「………ごめん、優しくするんだったね」
時雨を前に一瞬でも時雨から気がそれたなんて、愚かすぎる。
こんなにもかわいい時雨が真下にいて。
考え事なんて。
案の定。
考え事しながら欲望に貪欲に貪った甘い唇は。
時雨からほとんどの酸素を奪っていたようで。
ぐったりと。
浅く早く、呼吸を繰り返してる。
「時雨?」
「も、やだ、むり………っ」
「痛い?」
「………いたい、から……っ、むり」
腕に着いた噛み痕をがぶりと咥えて。
舌を這わす。
ぎゅ、と目を閉じ顔を反らす時雨を見上げた。
「………ほんとにいたい?ほんとに嫌?時雨」
「…………っ」
嫌なら辞める。
そう、耳元で告げると。
顔を真っ赤に紅潮させて。
涙をたくさん、貯めて。
時雨はまっすぐにこちらを見た。
「………時雨のそーゆーところ、ずるいよな」
なんて顔して、こっち見るの。
そんな顔して、「嫌」なんて言うの。
おまえは。
「抱くよ?」
「…………あたしに拒否権、くれないくせに」
「あげたじゃん」
「あんなの………っ」
「ん?嫌?」
知ってる。
時雨が、いつも俺の欲求に付き合ってくれること。
どんなに否定の言葉をつないでも、体は受け入れてくれること。
ちゃんと。
知ってるんだよ。
「抱かせて。時雨」