第2章 暗殺者の上手な愛でかた壊しかた
………涙。
「教授しか、いないのに」
「え」
「あたしにはもう、教授しかいないのに」
「時雨……」
「教授に捨てられたら時雨は、どーすればいいの」
涙。
時雨の、涙。
「弱いところなんか見せてやらない!」
いつもそうやって片意地張って。
弱さを見せないのも時雨の魅力だと、思う。
でも。
だけど。
『教授に捨てられたら、どーすればいいの?』
こんな時雨は、見たことない。
「それこそ、泣くから!」
いや、もう泣いてるし。
「なんで笑ってんの!?」
かわいくて。
時雨があんまり、かわいくて。
止まらない。
「教授!!」
いつの間にか。
時雨を再度、腕の中へと閉じ込めた。
「教授?」
「ねぇ時雨……」
耳元で、最大限優しく。
艶のある声でそう、名を呼べば。
びくん、と反応する時雨がかわいすぎて。
つい。
苛めたくなる。
「………ダメ?体、痛くないってさっき言ってましたよね」
「………っ」
耳の中へと舌を差し込んで。
わざと。
ピチャピチャ音を立てた。
「む、り……っ、壊れ、るか、ら……っ」
「大丈夫」
「………じゃな……ぁっ、なん、で、いきな、り…」
身を捩って逃げようとする時雨を、ベッドへと押し倒す。
「ほ、んと!!無理……っ」
「時雨がかわいすぎて無理」
「意味わかん、な………っ」
時雨の両手をベッドへと縫い止めたままに、胸の頂へと舌を這わした。
「ひぁ………っっ!」
びくん、と跳ね上がる体。
「きょー、じゅ……っ、やだ、むりこわれ……っ」
「優しくします」
その泣き顔。
余計煽るだけって今度教えてやらないと。
「好きです時雨。上書きさせて下さい」
「や、だむり……っ、できな………ぁ」
「私を拒まないで、時雨」
さっきみたいに。
受け入れて。
服からチラリと見える首筋の噛み痕を、丁寧に舐めとった。
「や、っぁあ!」