第2章 暗殺者の上手な愛でかた壊しかた
「…………痛み、ますか?」
浮上した意識とともに目を開ければ。
右手には暖かい温もり。
その温もりに、額をくっつけて。
教授がそう、口を開いた。
「見てないのに、なんで起きたのわかるの?」
あたしの右手に額をくっつけたまま、教授の目は、閉じたまま。
動いてもいないのに、なんでわかるのか疑問だった。
「勘です」
額を離してこちらへと視線を向ける教授が、消えちゃいそうに、笑った。
「………何それ」
「時雨」
「?」
「痛みますか?」
心配そうに視線を絡ませる、教授。
今にも消えちゃいそうな光で、すがるようにあたしを見る。
「………痛い」
「すみません」
「すごく痛いし、すごく怖かった」
「はい………」
「教授なんて、死んじゃえ!って、何度も思った」
「………」
「殺されるかと、思った」
だけど。
傍らにいる教授へと手を伸ばし。
微笑む。
「だけどやっぱり、嫌いになれないの」
いつもの意地悪な教授も。
優しい教授も。
怖い、教授も。
大好きだから。
「次からは機嫌悪いときは先に言ってね、教授。毎回あれだと、体持たない」
「もうしませんよ、こんな酷いこと」
「酷いことって、自覚あったんだ」
「………正直、途中からしか覚えてなくて」
「………正気取り戻したのに、あんな酷いことしたの、教授」
「止められなくて」
「いつ?いつから?」
「キスして、時雨の自由奪ったあたりから……」
「最後じゃん!!あれ、一番キツかった!!死ぬかと思ったんだよ、あれほんと!!」
「苦しそうにしてる時雨みたら、止まりませんでした」
「最低!!」
「………今さら、いいますか」
「…………」
確かに。
教授が最低なのは今に始まったことじゃない。
嗜虐癖があることも、知ってる。