第2章 暗殺者の上手な愛でかた壊しかた
「………時雨」
シャワーを終えて、リビングへと赴けば。
時雨の姿はなくて。
雨音くんのところにでも行ったか、そう、ため息を吐き出して。
朝日が登り始めたばかりのまだ明るい時間。
冷蔵庫からビールを取り出した。
ビールを何本か開けたのち、リビングから寝室へと移動する。
眠気に襲われたわけでもないが、横になりたい気分でもあったから。
だけど。
ベッドには。
出掛けたと思っていた時雨の姿。
「………邪魔、しないから」
「え」
「教授が嫌なら、あたしリビング行く、から」
「追い出さないで」泣きそうな顔で、そう、見上げる時雨。
違う。
涙の、あと。
泣いて、た?
俺がリビングにいたから、ずっとここに?
「…………っ」
ぐ、と。
拳を握りしめて唇を結めば。
ハッとしたように時雨がベッドから起き上がった。
「あたし、リビングに……」
横を通りすぎようとする時雨の腕を掴んで。
ベッドへと放り投げていた。
「教授?」
「時雨」
吐き気がする。
時雨の純粋な瞳にさえ。
自分を見る時雨の瞳にすら。
吐き気がする。
イラつきを覚える。
「………そんなに、私が好きですか?」
「え」
後ろに両肘をついて、体を起こす時雨の頬へと手を伸ばし、親指で撫で上げた。
「私が、何をしても?」
「教授?」
今はただ、イライラする。
血が騒ぐ。
お酒も入って、いい感じに理性もとんだ。
イライラする。
「嫌なら、いつものように拒否ればいい」
時雨の服へと手を掛けて。
「時雨が嫌だ、と泣き叫べば、止めてあげます」
それを力任せに剥ぎ取った。